観光特急はなぜ人気?|プレミアムシート時代の鉄道旅を考える
💡 まずはここだけ!3つの要点
- 観光特急は「速く着く列車」ではなく「乗っている時間そのものを楽しむ列車」へと役割が変わってきた
- 人気の背景には、モノより体験を重視する流れ・SNSとの相性・移動時間の捉え直しがある
- しまかぜやひのとりなど、プレミアムシートを前面に出した車両が各社で続々と登場している
観光特急って、なんでこんなに人気なんだろう? 速く着くだけならほかの手段もあるのに、わざわざ乗りに行きたくなる列車が各社で増えています。 プレミアムシート時代の鉄道旅を、ゆるく考察してみます。
そもそも「観光特急」とは
ここでいう観光特急は、目的地へ速く運ぶことよりも、移動している時間そのものを旅の一部として楽しんでもらうことに重きを置いた特急列車を指します。 展望席や大きな窓、カフェ車両、個室やラウンジといった「過ごし方の選択肢」が用意されているのが特徴で、いわゆる「乗ること自体が目的になる列車」です。
もちろん、昔から景色のよい路線を走る特急はありました。 ただ近年は、車両のコンセプトそのものを「観光体験」に振り切った列車が各社から登場し、料金にプレミアムを上乗せしても乗りたい人が集まる、という現象が目立つようになっています。 通勤・出張で使う「速さ重視の特急」とは、そもそも狙いが違う乗り物だと考えると分かりやすいでしょう。
なぜいま観光特急が人気なのか
理由はひとつではありませんが、大きく分けると次のような流れが重なっているように見えます。
1. 「モノ」より「体験」にお金を使う流れ
ここ数年、旅行や食事、ライブのような「体験」にお金を使う傾向が強まっているとよく言われます。 観光特急はまさにこの流れに乗った乗り物で、「移動」という普段は地味になりがちな時間を、わざわざお金を払ってでも味わいたい体験に変えてくれます。 展望席で景色を眺めたり、カフェ車両で土地の食材を味わったりする時間は、目的地での観光と並ぶ「旅のハイライト」になり得るわけです。
2. 写真・動画と相性がいい
展望席からの眺めや、こだわり抜かれた内装、土地の食材を使ったメニューは、写真や動画で共有したくなる要素にあふれています。 SNSや動画サイトで誰かの乗車体験を見て「自分も乗ってみたい」と思う人が増え、それがまた次の人の発信につながる、という循環が起きやすいのも、観光特急の人気を後押ししている要因のひとつでしょう。
3. 「移動時間」の捉え方が変わった
かつては「移動時間は短いほどよい」が当たり前でした。 けれど、車内でゆっくり景色を眺めたり、食事をしたり、家族や友人と過ごしたりする時間を「もったいない時間」ではなく「贅沢な時間」と捉える人が増えています。 数十分から数時間という移動を、あえてプレミアムな空間で過ごす——そんな選択肢として観光特急が支持されているのだと思います。
4. 各社の「フラッグシップ競争」
鉄道会社にとっても、観光特急は自社の魅力を発信する看板(フラッグシップ)になります。 話題になる車両があれば沿線への集客につながり、「あの列車に乗るために旅行先を決める」という動機づけも生まれます。 結果として各社が趣向を凝らした車両を投入し、利用者から見れば「選べる観光特急」がどんどん増えていく、という好循環になっているわけです。
プレミアムシート時代を象徴する列車たち
「プレミアムシート時代」という言葉がしっくりくるくらい、近年は座席や空間の質を前面に出した列車が増えました。 本サイトで取り上げている中から、タイプの違う何本かを挙げてみます。
- しまかぜ(近鉄・大阪/京都/名古屋〜賢島): ハイデッカー展望車・2階建てカフェ車両・個室を備え、「乗ること自体が目的」を体現した伊勢志摩の観光特急
- ひのとり(近鉄・大阪難波〜近鉄名古屋): 名阪を結ぶ都市間特急ながら、全席バックシェルや本革のプレミアムシートで移動の質を一段引き上げた一本
- ロマンスカー・はこね(小田急・新宿〜箱根湯本): 前面展望席という分かりやすい主役を持ち、箱根という観光地と長く結びついてきた私鉄特急
- THE RAIL KITCHEN CHIKUGO(西鉄): 車内で食事を楽しむ"走るレストラン"型。移動と食事を一体化させた観光列車
都市間移動の質を高めたタイプ(ひのとり)、観光地への足が体験そのものになっているタイプ(しまかぜ・ロマンスカー)、車内での過ごし方が主役のタイプ(RAIL KITCHEN CHIKUGO)と、ひとくちに観光特急・プレミアム車両といっても方向性はさまざまです。 自分の旅のスタイルに合う一本を探す楽しみがある、というのも人気の一因かもしれません。
観光特急を楽しむときのちょっとしたコツ
せっかく乗るなら気持ちよく楽しみたいもの。考察ついでに、実際に乗るときのちょっとしたポイントも整理しておきます。
1. 人気の列車ほど早めの予約を
話題の観光特急は全席指定で運転日が限られることも多く、休日や観光シーズンはすぐに満席になりがちです。 乗りたい日が決まったら、発売開始のタイミングを意識して早めに手配しておくと安心です。
2. 景色を楽しむなら座席の向き・左右を意識
展望席や眺めのよい区間がある列車では、進行方向に対してどちら側の窓かで見える景色が変わります。 海側・山側など、その列車のハイライト区間でどちらが当たりかを事前に調べておくと、車窓の満足度がぐっと上がります。
3. 「乗ること」を旅程の主役に据える
観光特急は、目的地までの「ついで」にするにはもったいない乗り物です。 乗車そのものを旅のメインイベントとして旅程を組むと、移動の時間まで含めて満足度の高い旅になりやすいです。 どのあたりを走っているのかは、本サイトの走行マップでもイメージできます。
まとめ
「観光特急はなぜ人気?」という問いへの、現時点(2026年6月)でのフラットな答えは、 「速く着くための乗り物だった特急が、移動時間そのものを楽しむ"体験"へと役割を広げ、その流れが旅のスタイルや発信のしやすさと噛み合ったから」 というあたりに落ち着きそうです。
プレミアムシートやカフェ車両は、その「体験」を分かりやすく形にしたもの。 各社がフラッグシップとして力を入れ、利用者が選べる一本を探せるようになったことで、人気はしばらく続いていきそうです。
次の旅では、目的地だけでなく「どの列車で行くか」から考えてみると、移動の時間まで含めて少し豊かになるかもしれません。
関連情報・参考リンク
本記事は2026年6月時点の公開情報と一般的な傾向をもとに、筆者の解釈で整理した考察コラムです。 各列車の最新の運行状況・設備・料金等は、必ず各鉄道事業者の公式情報をご確認ください。