御殿場・箱根・沼津を鉄道とバスでつなぐ旅|ロマンスカーふじさん・御殿場線・箱根の周回と「かつての東海道本線」をたどる回り方
💡 まずはここだけ!3つの要点
- 新宿から箱根へはロマンスカー「はこね」、御殿場へは「ふじさん」。二つの終点は箱根の山の東と西にあります
- 箱根の山上と御殿場はバスで結ばれていて、行きと帰りで別のロマンスカーに乗る「通り抜け」の周回が組めます
- 御殿場線はかつての東海道本線。御殿場から沼津へ下れば、箱根の山をぐるりと一周する旅にもなります
箱根へ行くとき、多くの人は小田原か箱根湯本から山に入り、同じ道を戻ってきます。ところが地図を広げてみると、箱根の山の向こう側、富士山の東のふもとに御殿場という町があり、そこから先は沼津まで一本の線路が続いています。
新宿から延びる二本のロマンスカー、箱根の山を登る電車とロープウェイ、山上と御殿場を結ぶバス、そして御殿場線。これらを組み合わせると、箱根は「行って戻る場所」から「通り抜ける場所」に変わります。そして、その旅の背骨になる御殿場線には、少し意外な過去があります。
箱根の山を越えられなかった東海道
1889年、東海道本線の国府津〜沼津が開通しました。このとき線路が通ったのは、いまの小田原・熱海の海沿いではありません。箱根の山を正面から越えるトンネルを掘る技術はまだなく、線路は山の北側を大きく回り込み、酒匂川の谷をさかのぼって御殿場の高原を越え、沼津へ下るルートが選ばれました。いまの御殿場線こそが、かつての東海道本線だったのです。
ただ、この道は険しいものでした。御殿場へ向かう区間には25‰(1000m進んで25m上る)の急な上り坂が続き、蒸気機関車はもう1両の機関車の助けを借りなければ登れませんでした。その拠点になったのが山北の町です。機関区が置かれ、多くの鉄道員が暮らす「鉄道の町」として栄えました。
転機は1934年12月に訪れます。熱海と函南のあいだに丹那トンネルが開通し、東海道本線は海沿いの熱海経由に付け替えられました。山を回り込んでいた国府津〜御殿場〜沼津は、この日から「御殿場線」というローカル線になります。戦時中の1943年ごろには、複線だった線路の片方がはがされて資材に回され、単線になりました。いまも沿線のトンネルや橋のそばに、もう一本分の線路が通っていた跡が見られる場所があります。
主役の座を降りた御殿場線に、新しい役割を持ち込んだのが小田急でした。1955年、新宿から御殿場線へ乗り入れる列車が走り始め、1968年の電化を経てロマンスカーが直接入ってくるようになります。かつての大動脈は、いまは富士山と箱根の「裏口」へ旅人を運ぶ線路として生きています。
二本のロマンスカーと、それをつなぐ線
このエリアの乗り物は、役割で整理するとすっきりします。
| 乗り物 | 主な区間 | 役割 |
|---|---|---|
| ロマンスカー「はこね」 | 新宿 → 小田原 → 箱根湯本 | 箱根の東の玄関口へ。本数が多く、旅の起点にしやすい |
| ロマンスカー「ふじさん」 | 新宿 → 松田 → 御殿場 | 箱根の西側・富士山の東麓へ。1日3往復ほどの少数精鋭 |
| 箱根の山の乗り物 | 箱根湯本 → 強羅 → 早雲山 → 大涌谷 → 桃源台 | 登山電車・ケーブルカー・ロープウェイを乗り継いで山を越える |
| 御殿場方面のバス | 桃源台・仙石原 → 御殿場駅(乙女口) | 箱根の山上と御殿場を結ぶ「ミッシングリンク」 |
| JR御殿場線 | 国府津 → 松田 → 山北 → 駿河小山 → 御殿場 → 裾野 → 沼津(主な駅) | 旧東海道本線。御殿場から沼津へ下る寄り道にも |
はこね:箱根の東の玄関口
新宿から箱根湯本まで乗り換えなしで向かうロマンスカーです。所要はおおよそ1時間半弱が目安で、本数も多く、箱根旅の起点として使いやすい列車です。前面展望席のある車両に当たれば、それだけで旅の気分が上がります。詳しくはロマンスカー・はこねの記事で整理しています。
ふじさん:御殿場線へ入るただひとつのロマンスカー
新宿から小田急線を下り、松田でJR御殿場線に乗り入れて御殿場まで向かう列車です。新宿〜御殿場はおおよそ1時間半あまり。1日3往復ほどしかないため、「来た列車に乗る」のではなく「乗る列車を決めてから組み立てる」のが基本になります。会社の境目を越えるしくみはロマンスカーふじさんの記事で詳しく解説しています。
御殿場線:山の北側を回る旧本線
国府津から松田、山北を経て御殿場の高原へ上り、裾野を通って沼津へ下る路線です。運行はJR東海で、ロマンスカーが乗り入れるのは松田〜御殿場だけ。御殿場〜沼津は普通列車で、本数はおおむね1時間に1〜2本程度が目安です。御殿場から沼津まではおおよそ40分前後で、富士山を横に見ながら高原を下っていきます。
箱根を「通り抜ける」周回ルート
この旅のいちばんの醍醐味は、行きと帰りで違うロマンスカーに乗り、そのあいだで箱根の山を越えることです。代表的なのは、東から入って西へ抜ける次の流れです。
新宿 →(ロマンスカー はこね)→ 箱根湯本 →(箱根登山電車)→ 強羅 →(ケーブルカー)→ 早雲山 →(ロープウェイ・大涌谷経由)→ 桃源台 →(バス)→ 仙石原 → 御殿場駅 →(ロマンスカー ふじさん)→ 新宿
登山電車とロープウェイで、山を登りきる
箱根湯本から強羅までの登山電車は、おおよそ40分前後。急な坂を少しずつ上るために、途中で3回も進行方向を変える「スイッチバック」を繰り返します。強羅からケーブルカーで早雲山へ上がり、ロープウェイに乗り継げば、噴煙の上がる大涌谷を眼下に見ながら芦ノ湖のほとりの桃源台まで空中散歩です。時間に余裕があれば、桃源台から海賊船で芦ノ湖を渡る寄り道もできます。
なお、大涌谷周辺は火山活動の状況によって立ち入りやロープウェイの運行が制限されることがあります。強風や点検で運休する日もあるため、出かける前に運行状況を確認しておくと安心です。
山の上から御殿場へ、バスで下る
桃源台や仙石原から御殿場駅へは、箱根登山バスや小田急箱根高速バスの路線が結んでいます。仙石原を出て乙女峠のあたりを越えると、道の先に富士山が大きく現れ、御殿場の町へ下っていきます。所要は30〜40分ほどが目安ですが、週末や連休は道路が混みやすく、時間が読みにくくなります。
ここが周回の要です。ふじさんは本数が少ないため、帰りのふじさんの指定席を先に押さえ、そこから逆算してバスの時間を決めるのが確実です。御殿場駅にはバスで着く「乙女口」側と、反対側の出口があるので、乗り換えの時間には少し余裕を見てください。
逆回りもできる
もちろん、行きにふじさんで御殿場へ入り、帰りを箱根湯本からのはこねにする逆回りも組めます。朝のうちに御殿場で富士山を眺め、午後は箱根の温泉でゆっくりしてから帰る、という順番です。帰りのはこねは本数が多いので時間の自由がききやすく、「最後は温泉で締めたい」人にはこちらが向いています。
御殿場で降りたら、もう少し先の沼津へ
御殿場は富士山の東側に広がる高原の町です。駅からは御殿場プレミアム・アウトレットへの無料シャトルバスが出ていて、富士山を眺めながらの買い物を目当てに訪れる人も多くいます。秩父宮ご夫妻が暮らした別邸を公開する秩父宮記念公園も、静かに過ごせるスポットです。
そして、ふじさんの終点・御殿場から先も線路は続いています。御殿場線の普通列車で南へ下ると、裾野のあたりで富士山の裾野がゆるやかに広がり、やがて終点の沼津に着きます。かつてのロマンスカー「あさぎり」が走っていた区間でもあります。
沼津といえば、港のそばに食堂が並ぶ沼津港です。地元名産の干物や、駿河湾の魚を使った海鮮丼が楽しめ、深海魚を集めた沼津港深海水族館もあります。沼津駅から港へはバスか、歩くと25分前後が目安です。
沼津から帰ると、箱根を一周したことになる
沼津からの帰り道は、東海道線で隣の三島へ出て新幹線に乗るか、東海道線で熱海・小田原方面へ戻るのが一般的です。東海道線で熱海へ向かうと、列車は函南を過ぎて丹那トンネルをくぐります。
つまりこのルートでは、行きにかつての東海道本線(御殿場線)で箱根の北側を回り、帰りにいまの東海道本線(丹那トンネル経由)で南側を抜けることになります。新旧二本の「東海道」に一日で乗り、箱根の山をぐるりと一周する旅です。
モデルルート:日帰りなら片側、1泊なら一周
日帰り①:箱根を通り抜けて御殿場へ
はこねで箱根湯本へ → 登山電車・ケーブルカー・ロープウェイで芦ノ湖へ → 桃源台・仙石原からバスで御殿場へ → アウトレットか駅周辺で少し過ごし、ふじさんで新宿へ。乗り物の乗り継ぎが多いぶん、箱根の観光は「大涌谷と芦ノ湖」くらいに絞ると時間に余裕が出ます。
日帰り②:御殿場線で沼津へ下る
ふじさんで御殿場へ → 御殿場線で沼津へ → 沼津港で昼食・散策 → 東海道線で三島へ出て新幹線で帰る。箱根の山には登りませんが、旧東海道本線の高原越えと港町の両方を味わえます。
1泊2日:箱根に泊まって、ぐるりと一周
1日目ははこねで箱根湯本へ入り、登山電車で強羅や宮ノ下あたりまで上って温泉宿に一泊。2日目はケーブルカーとロープウェイで芦ノ湖へ抜け、バスで御殿場へ。御殿場線で沼津まで下って港で昼食をとり、東海道線で熱海・小田原方面へ戻れば、丹那トンネルをくぐって箱根の一周が完成します。宿を仙石原に取ると、御殿場へのバスに乗りやすくなります。
きっぷとICカードの注意点
会社や路線をまたぐ旅なので、支払いまわりにはいくつか注意点があります。
- ICカードは会社の境目で通しにならない: 小田急線とJR御殿場線、JR東日本の区間(国府津より東)とJR東海の区間(御殿場線・熱海より西の東海道線)は、ICカードで通しの乗車ができない組み合わせがあります。ふじさんで新宿から御殿場まで乗る場合や、沼津から東海道線で東京方面へ乗り通す場合は、紙のきっぷを用意するか、境目の駅で精算する前提で考えておくと安心です。
- 箱根フリーパスの範囲を確かめる: 小田急の「箱根フリーパス」は、登山電車・ケーブルカー・ロープウェイ・海賊船・路線バスなど箱根エリアの乗り物をまとめて使えるきっぷです。ただし、御殿場方面のバスがどこまで対象になるかは路線や区間で異なるため、周回に使う場合は購入前に公式案内で確認してください。
- ふじさんは先に予約: 1日3往復ほどしかないうえ、アウトレットのセール時期や紅葉シーズンの週末は混み合います。満席のときは、御殿場線の普通列車で松田へ出て、隣の小田急・新松田駅からロマンスカーや急行に乗り継ぐ方法もあります。
最新の時刻や運賃、フリーパスの内容は、小田急電鉄・箱根ナビ・JR東海の公式情報で確認してから出かけてください。
泊まるなら、山の上か富士山のふもとに
一泊するなら、周回の向きに合わせて宿を選ぶのがコツです。東から西へ抜けるなら強羅・宮ノ下・仙石原などの箱根の山上、逆回りや沼津まで足をのばすなら御殿場周辺が候補になります。御殿場に泊まると、空気の澄んだ朝に富士山を正面から眺められるチャンスが増えます。
ロマンスカーと宿をまとめて考えたい場合は、楽天トラベルなどの宿泊予約サイトで、箱根と御殿場の両方のエリアを見比べてみるのもひとつの方法です。紅葉の時期や連休の箱根は宿が早めに埋まりやすいので、日程が決まったら宿から押さえておくと計画が立てやすくなります。
まとめ
御殿場・箱根・沼津の旅は、乗り物の役割で整理すると迷わなくなります。
- ロマンスカー「はこね」: 箱根の東の玄関口・箱根湯本へ。本数が多く、旅の起点や帰り道に使いやすい
- ロマンスカー「ふじさん」: 箱根の西側・御殿場へ。1日3往復ほどなので、乗る列車を先に決めて予約する
- 箱根の山の乗り物とバス: 登山電車・ケーブルカー・ロープウェイで芦ノ湖へ上り、桃源台・仙石原からバスで御殿場へ下りる
- JR御殿場線: かつての東海道本線。御殿場から沼津へ下れば、丹那トンネル経由の帰り道と合わせて箱根を一周できる
次に東海道新幹線や東海道線で丹那トンネルをくぐるとき、北側の山の向こうを少しだけ想像してみてください。そこには、かつて蒸気機関車が二台がかりで坂を登っていた、もうひとつの東海道があります。いまはロマンスカーが富士山へ向かい、普通列車がのんびり高原を下っていく線路です。一度その線路に乗ってみると、いつもの箱根旅が、山をぐるりと回る旅に変わるはずです。
関連情報
本記事は2026年11月時点の情報をもとに個人が整理した解説コラムです。 最新の運行状況・運賃・フリーパスの範囲・バスの路線や時刻等は、必ず公式情報でご確認ください。