或る列車完全ガイド|博多〜由布院の運転日・予約方法・2両の座席とコース料理、明治に走れなかった豪華客車を蘇らせたJR九州の観光列車の乗り方
💡 まずはここだけ!3つの要点
- 博多〜由布院を土・日・月曜中心に1日1往復する2両の観光列車。片道はおおよそ3時間かけて走る
- きっぷでは乗れず、列車とコース料理がセットの旅行商品だけで発売。駅の窓口では買えない
- 10歳未満は乗車できない。発売は年3回に分けて行われ、専用サイトの予約は出発5日前まで
或る列車(あるれっしゃ)は、JR九州が博多〜由布院で運行する2両編成の観光列車です。モデルは、明治時代に注文されながら、ほとんど誰も乗ることのなかった豪華客車。この記事では、その不思議な生い立ちと、現在の運転日・予約方法・座席・コース料理を順に解説します。
注文したのに、走る場所がなくなった客車
話は明治39年(1906年)にさかのぼります。当時、九州北部に路線を広げていた私鉄の「九州鉄道」は、アメリカのブリル社に豪華な客車を発注しました。ところが同じ年に鉄道国有法が成立し、九州鉄道は国に買収されることになります。届いた客車は、当時の日本でもっとも豪華な設備をもつとされながら、活躍する機会のないまま歴史に埋もれていきました。
正式な列車名すら定まらなかったこの客車を、鉄道ファンは「或る列車」と呼びました。名前のない列車だから「或る」。この列車名は、ちょっとした謎かけのようなものなのです。
100年後、この幻をつないだのが、鉄道模型の世界で知られた故・原信太郎氏でした。原氏が愛し、模型として形に残していた「或る列車」をもとに、ななつ星 in 九州も手がけた水戸岡鋭治氏がデザインを担当。キハ47形気動車を改造した2両が、2015年8月に九州の線路へ帰ってきました。
スイーツ列車から、コース料理の列車へ
デビュー当初の名前は「JRKYUSHU SWEET TRAIN『或る列車』」。その名のとおり、スイーツを主役にしたコースが楽しめる列車として、大分〜日田や長崎方面などの区間を日替わりのように走っていました。
大きく姿を変えたのは2021年11月です。運行区間を博多〜由布院に移し、スイーツだけでなく前菜や肉料理まで出る本格的なコース料理の列車に生まれ変わりました。現在、公式サイトでは「JRKYUSHU DISCOVER TRAIN『或る列車』」の名で案内されています。いまも食事の締めくくりにはスイーツが2段構えで出てくるあたりに、スイーツ列車だったころの面影が残っています。
運行会社と運行区間
- 運行会社: JR九州
- 運行区間: 博多〜由布院(鹿児島本線で久留米へ、久留米から久大本線)
- 使用車両: キハ47形気動車を改造した2両編成(1号車=テーブル席、2号車=個室)
- 運転日: 土・日・月曜が中心(公式の運行カレンダーで指定された日のみ)
- 運行本数: 1日1往復(博多発の午前便と、由布院発の午後便)
- 所要時間: 片道おおよそ3時間(2026年10月時点の目安)
- 乗り方: 列車とコース料理がセットになった旅行商品のみ。座席だけの発売はない
午前便と午後便
| 便 | 区間 | 時間帯の目安 |
|---|---|---|
| 午前便 | 博多 → 由布院 | 博多を午前10時台に出て、由布院に14時ごろ着 |
| 午後便 | 由布院 → 博多 | 由布院を15時ごろに出て、博多に18時ごろ着 |
旅行商品として設定されているのは、博多発・由布院着の午前便と、由布院発・博多着の午後便の2種類です。公式の案内では、途中の駅から乗り降りする設定は示されていません。同じ区間を走る特急ゆふいんの森がおおよそ2時間〜2時間半前後なので、或る列車はあえて30分〜1時間ほど長くかけて、食事の時間をつくっている計算になります。最新の時刻は 専用サイトの「運転日・時刻」 でご確認ください。
運転日 — 「週末+月曜」が基本のリズム
或る列車は、毎日は走りません。2026年10月時点で公式に発表されている運転日は、おおむね毎週の土・日・月曜で、1日1往復です。2026年10月〜2027年2月の運転日を、月ごとに整理すると次のとおりです(専用サイトの運行カレンダーによる)。
| 月 | 運転日 |
|---|---|
| 2026年10月 | 3日〜5日、10日〜12日、17日〜19日、24日〜26日、31日(いずれも土〜月) |
| 2026年11月 | 1日・2日、7日〜9日、14日〜16日、21日〜23日、28日〜30日 |
| 2026年12月 | 5日〜7日、12日〜14日、19日〜21日(年末年始は運転なし) |
| 2027年1月 | 9日〜11日、16日〜18日、23日〜25日、30日・31日 |
| 2027年2月 | 1日、6日〜8日、13日〜15日、20日〜22日、27日・28日 |
注意したいのは、年末年始には運転がないことです。2026年はお盆にあたる8月中旬の週末も運転がありませんでした。かわりに、2026年8月11日には熊本デスティネーションキャンペーンを記念して博多〜熊本での特別運行が行われるなど、ときどき通常とは違う区間を走ることもあります。2027年3月以降も運行される予定ですが、詳しい運転日は決まり次第の発表とされています。
車両と座席 — 金と黒の外観、木の車内
外観は、原信太郎氏の模型を手本にした金と黒の塗り分けに、唐草模様をあしらったデザインです。車内はどちらの号車も木を主役にしたつくりで、1号車は明るいメープル材、2号車は落ち着いたウォールナットと、雰囲気が分けられています(2026年10月時点の公式案内による)。
| 号車 | 座席 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 1号車(テーブル席車両) | 2名用テーブル・4名用テーブル。ななつ星 in 九州と同じ「格(ごう)天井」 | 2人旅、3〜4人のグループ |
| 2号車(個室車両) | 1名用個室・2名用個室。ウォールナットの組子に囲まれた空間 | 1人旅、記念日の2人旅 |
- 相席はない: テーブルも個室も、ほかのグループと相席になることはない
- 4名用テーブルは3名から: 1〜2名で4名用テーブルを使うことはできない
- 1人で2名用の席を使う場合: 1名利用の旅行代金(割増)になる
- 窓の小さい席がある: 一部の席は、ほかより窓のスペースが小さいと公式に案内されている
- 車いす対応席: 2号車に1席。予約後、専用の問い合わせ窓口へ事前に電話で連絡する
- 設備: 全車禁煙。Wi-Fiはあるが、スマートフォンを充電できるコンセントはない
コース料理 — 3時間かけて味わう5品
料理をプロデュースしているのは、東京・南青山のレストラン「NARISAWA」のオーナーシェフ、成澤由浩氏です。成澤氏が九州各地の生産者を訪ねて選んだ食材を中心に、器も九州の職人がこの列車のためにつくったものが使われています。
- 構成: 前菜、お米料理、お肉料理、メインスイーツ、ミニスイーツ(小さな菓子3つ)の5品(2026年秋のコース)
- 季節替わり: 秋のコースは2026年11月30日まで。12月5日からは冬のコースに替わる予定
- ドリンク: 旅行代金に含まれる(フリードリンク)
- 午前便と午後便: メニューは同じ。大人とこどもも同じ内容
- アレルギー: 全員共通の料理のため、アレルギーや苦手な食材への対応はない
- 持ち込み・持ち帰り: 車内での持ち込み飲食はできず、料理の持ち帰りもできない
量はしっかりあるので、公式のよくある質問でも、乗る前の食事は軽めにすることがすすめられています。午前便なら朝食を控えめに、午後便なら昼食を控えめに、と考えておくとちょうどよさそうです。ドレスコードはありません。
予約のしかた — きっぷではなく「旅行」を買う
或る列車でいちばん戸惑いやすいのが、買い方です。この列車はみどりの窓口で特急券を買うタイプではなく、JR九州が企画・実施する旅行商品として発売されています。列車の乗車とコース料理・ドリンクがひとまとめになった「旅行代金」を払って参加するかたちです。食事つきプランときっぷの違いは、観光列車の食事つきプランのコラムで詳しく整理しています。
- 予約先: 或る列車の専用サイト(JR九州企画・実施分)。このほか、大手を中心とした旅行会社のツアーにも組み込まれている
- 駅では買えない: みどりの窓口での取り扱いはない
- 割引は使えない: 旅行商品のため、JR九州レールパスや各種割引きっぷ・株主優待券などは使えない
- 旅行代金: 1人あたりで、号車・座席タイプ・利用人数によって変わる。こども代金は10歳以上の小学生に適用。2026年4月運行分から改定されているので、最新額は公式で確認する
- 締切: 専用サイトでの予約は出発日の5日前まで
- 乗車証: 予約完了後に「乗車証」をダウンロードし、当日はスマートフォンの画面か印刷したものを有人改札で見せる
- 取消: 出発日の前日から数えて10日目にあたる日から取消料がかかる。日付や座席の変更はできず、取り直しになる
発売は年3回 — 狙う時期を逃さない
専用サイトでの発売は、原則として①4月〜9月運行分、②10月〜2月運行分、③3月運行分の3回に分けて行われます。例年の目安は、①がその年の1月ごろ、②が7月ごろ、③が前年の12月ごろです。実際に、2026年10月〜2027年2月運行分は2026年7月15日に発売されました。
満席の場合、キャンセル待ちは受け付けていません。そのかわり、予約画面で空席通知を登録しておくと、キャンセルなどで希望の日・便に空きが出たときにメールで知らせてもらえます(席が確約されるわけではありません)。
乗れる年齢に注意
或る列車には、10歳未満の子どもは乗車できません。座席や料理を必要としない乳幼児を抱いて乗ることもできないので、家族旅行で考えている場合は最初に確認しておきたいポイントです。また、15歳未満もしくは中学生以下は保護者の同行が条件で、18歳未満が親権者以外と参加する場合などは同意書の提出が必要です。
由布院での過ごし方 — 片道は或る列車、もう片道は
午前便で博多を出ると、由布院に着くのは14時ごろ。食事は車内で済んでいるので、そのまま温泉街の散策に出られます。所要は2026年10月時点の目安です。
- 金鱗湖(由布院駅から徒歩25分前後): 湖面から湯気が立つ朝の景色で知られる、由布院を代表する散策スポット。泊まった翌朝に訪ねるのもおすすめ
- 湯の坪街道: 駅から金鱗湖へ向かう道沿いに、雑貨店や食べ歩きの店が並ぶ通り
- 由布院温泉に泊まる: 由布岳を望む宿が点在する温泉地。或る列車の午後便は同じ日の夕方発なので、泊まる場合は帰りの手段を別に考える
現実的なのは、片道だけ或る列車に乗り、もう片道は別の列車にする組み方です。由布院で1泊して、翌日は特急ゆふいんの森や特急ゆふで博多へ戻る。あるいは、前日に別の列車で由布院入りして泊まり、翌日の午後便で博多へ帰る。どちらも、或る列車の運転日と宿の空きを同時に押さえるのがコツです。
名前のなかった客車に、いま乗るということ
明治の九州鉄道が思い描いた豪華客車は、国有化という時代の大きな流れの中で、走る場所を失いました。名前さえ定まらなかったからこそ「或る列車」。その幻が、鉄道模型を手がかりに100年あまりの時を超え、いまは週末ごとに博多と由布院のあいだを往復しています。
乗ってみると、ゆふいんの森よりも長い3時間という所要が、むしろこの列車の本題だと分かるはずです。料理が一皿ずつ運ばれてくるあいだに、筑後平野が山あいへ変わり、やがて由布岳が見えてくる。最後のミニスイーツが出てきたら、それが明治の誰かが乗るはずだった列車の、100年遅れの「おもてなし」なのだと思い出してみてください。
よくある質問
Q. 或る列車は毎日走っていますか?
いいえ。2026年10月時点では、土・日・月曜を中心に公式の運行カレンダーで指定された日だけ、1日1往復走ります。年末年始やお盆の時期は運転がないことがあります。
Q. きっぷ(乗車券・特急券)だけで乗れますか?
乗れません。列車とコース料理がセットになった旅行商品のみの発売で、座席だけの利用はできません。駅のみどりの窓口でも扱っていないため、専用サイトか旅行会社のツアーで申し込みます。
Q. 子ども連れでも乗れますか?
10歳以上であれば乗れます。10歳以上の小学生にはこども代金が設定されています。10歳未満の子どもは、乳幼児を含めて乗車できません。
Q. 1人でも参加できますか?
できます。1名用の個室があるほか、2名用のテーブルや個室を1人で使うこともできます(1名利用の旅行代金になります)。4名用テーブルは3名からの利用です。
Q. ななつ星 in 九州とは何が違いますか?
ななつ星 in 九州は、何日もかけて九州をめぐる宿泊型のクルーズトレインです。或る列車は、片道3時間ほどの日帰りで、乗車中にコース料理を楽しむ列車です。豪華列車の雰囲気を、手の届きやすい形で味わえる存在といえます。ななつ星についてはクルーズトレイン入門で紹介しています。
関連情報
本ガイドは2026年10月時点の情報をもとに作成しています。 運転日・時刻・旅行代金・料理の内容などの最新情報は、運行会社の公式サイトをご確認ください。
- 列車紹介・予約: JR九州「或る列車」専用サイト
- 運行会社公式: JR九州