軽井沢・小諸・上田・別所温泉 信州を鉄道で巡る旅|しなの鉄道・上田電鉄・北陸新幹線の使い分けと「新幹線が通らなかった町」への回り方
💡 まずはここだけ!3つの要点
- 東京から軽井沢・上田へは北陸新幹線、その間の町めぐりはしなの鉄道、上田から別所温泉へは上田電鉄別所線が受け持ちます
- 城下町の小諸には新幹線が停まりません。しなの鉄道で軽井沢か上田から入るか、佐久平からJR小海線に乗り継ぎます
- しなの鉄道は2026年3月から全駅でSuicaが使えるようになり、お得なきっぷはデジタルチケットに切り替わりました
東京から北陸新幹線に乗ると、1時間ほどで軽井沢に着きます。そこから先、浅間山のふもとを西へ向かうと、小諸、上田、そして山あいの別所温泉と、性格の違う町が続きます。ところが、この町々を結ぶ鉄道は一本ではありません。新幹線、しなの鉄道、上田電鉄。三つの鉄道がそれぞれ別の役割を担っていて、その分担を知っているかどうかで、旅の組み立てやすさが大きく変わります。
話の始まりは、1997年のある一日です。
1997年、信州の鉄道地図が描き変わった
1997年10月、長野新幹線(現在の北陸新幹線)が高崎〜長野で開業しました。東京から長野までが一気に近くなったこの日、信州の鉄道にはもう二つの変化が起きています。
ひとつは、群馬県の横川と軽井沢のあいだ、急勾配で知られた碓氷峠の在来線が廃止されたこと。もうひとつは、軽井沢〜篠ノ井の信越本線がJRから切り離され、第三セクターのしなの鉄道に引き継がれたことです。新幹線の開業で並行する在来線がJRの手を離れる、いわゆる「並行在来線」の第1号でした(仕組みは並行在来線のコラムで詳しく整理しています)。
そしてもうひとつ、地図の上で見落とされがちな変化があります。新幹線は軽井沢を出ると、在来線の通る小諸を経由せず、南寄りのルートで新しくできた佐久平駅へ向かいました。古くから宿場町・城下町として栄えた小諸は、この日から「新幹線が通らない町」になったのです。
この三つの変化が、いまの信州の鉄道旅のかたちを決めています。
三つの鉄道の役割分担
このエリアの鉄道は、役割で整理するとすっきりします。
| 鉄道 | 主な区間 | 役割 |
|---|---|---|
| 北陸新幹線 | 東京 → 軽井沢 → 佐久平 → 上田 → 長野 | 東京からの行き帰りと、拠点の町どうしの速い移動 |
| しなの鉄道 | 軽井沢 → 中軽井沢 → 信濃追分 → 御代田 → 小諸 → 田中 → 上田 → 戸倉 → 篠ノ井(主な駅) | 浅間山麓の町を各駅で結ぶ。小諸へ行くならこれ |
| 上田電鉄別所線 | 上田 → 上田原 → 下之郷 → 中塩田 → 別所温泉(主な駅) | 上田から塩田平を抜けて別所温泉へ向かう寄り道の電車 |
北陸新幹線:行き帰りと「拠点間ワープ」
東京から軽井沢まではおおよそ1時間〜1時間10分、上田までは1時間半前後が目安です。このエリアで乗るなら、軽井沢・佐久平・上田に停まるあさまかはくたかを選びます。速達タイプのかがやきはこれらの駅に基本的に停まらないので、えきねっと等で予約するときは列車名を確かめてください。軽井沢〜上田は新幹線なら20分前後。帰りの時間が押したときの「ワープ手段」としても覚えておくと便利です。列車ごとの違いは北陸新幹線の記事にまとめています。
しなの鉄道:浅間山を眺めながら町をつなぐ
しなの鉄道は、かつての信越本線をそのまま受け継いだ線路です。軽井沢を出ると、中軽井沢、信濃追分、御代田と浅間山の南麓を下っていき、晴れた日には車窓の北側に山がどっしりと構えます。軽井沢〜小諸はおおよそ25分、小諸〜上田は20分前後が目安で、新幹線より時間はかかりますが、そのぶん途中の町で降りられるのが強みです。本数は都市部の電車ほど多くないので、途中下車をするなら次の列車の時刻を先に確かめておくと安心です。
週末を中心に、同じ線路を観光列車「ろくもん」も走っています。真田の赤をまとった車両で、食事付きプランもある列車ですが、2029年3月での引退が発表されています。
上田電鉄別所線:温泉へ向かう、もう一本の私鉄
上田駅のしなの鉄道・新幹線の改札とは別に、もうひとつ小さな私鉄の乗り場があります。上田電鉄の別所線です。上田から別所温泉まで15駅、30分ほどの短い路線で、千曲川を渡り、田んぼとため池の広がる塩田平をのんびり抜けていきます。
この路線には、忘れられない出来事があります。2019年10月の台風19号で、上田駅を出てすぐの千曲川に架かる赤い鉄橋が一部崩落しました。一時は存続も心配されましたが、2021年3月に鉄橋が復旧し、全線で運転が再開しています。いま何気なく渡っている鉄橋は、地元が守り抜いた区間でもあるのです。
町ごとの楽しみ方と、たどり着き方
軽井沢:新幹線の玄関口
軽井沢駅は新幹線としなの鉄道の両方が停まる、この旅の玄関口です。旧軽井沢銀座や雲場池へは駅から歩いたりバスを使ったりして向かい、星野エリアなどがある中軽井沢へは、しなの鉄道でひと駅移動できます。週末の旧軽井沢周辺は道路が混みやすいので、軽井沢駅と中軽井沢駅のあいだは電車を使うと気楽です。
小諸:新幹線が通らなかった城下町
小諸駅を出てすぐのところに、小諸城の跡を公園にした懐古園があります。城下町よりも低い位置に城を構えた珍しい「穴城」で、島崎藤村の詩『千曲川旅情の歌』の舞台としても知られ、秋は紅葉の名所になります。
新幹線が停まらない小諸へは、次の二つの入り方があります。
- しなの鉄道で入る: 軽井沢または上田からしなの鉄道に乗るのが、いちばんシンプルです。小諸を「通過点」ではなく、軽井沢と上田のあいだの途中下車先として組み込めます。
- 佐久平から小海線で入る: 新幹線で佐久平まで行き、JR小海線に乗り継いで小諸へ向かう方法もあります。佐久平〜小諸は20分前後が目安です。ただし小海線はICカードの扱いに注意点がある区間を含むため、乗る前にきっぷを買っておくのが確実です(後述)。
新幹線が来なかったぶん、小諸の駅前には昔ながらの城下町の空気が残っています。素通りされた町だからこそ、わざわざ降りる価値がある。この旅でいちばん「鉄道で来てよかった」と感じやすいのが小諸かもしれません。
上田:三つの鉄道が集まる真田の町
上田駅には北陸新幹線、しなの鉄道、上田電鉄の三つが集まります。このエリアの乗り換えの要です。駅から歩いて行ける上田城跡公園は、戦国時代に真田昌幸が築いた城の跡で、徳川の大軍を二度退けた城として知られています。駅前のあちこちで六文銭の旗を見かけるのも、真田の町らしい風景です。
別所温泉:「信州の鎌倉」で湯につかる
別所線の終点・別所温泉は、信州でも指折りの古い温泉地です。周辺には国宝の八角三重塔が建つ安楽寺、鎌倉時代にさかのぼる寺社が点在し、「信州の鎌倉」とも呼ばれています。温泉街の中心にある北向観音は、その名のとおり北を向いて建つ観音堂。南を向く長野の善光寺と向かい合う形になることから、「両方お参りしないと片参り」という言い伝えがあります。
終点の別所温泉駅には、かつて別所線を走った「丸窓電車」が保存されています。丸い窓が並ぶ姿は、旅の記念写真にぴったりです。
モデルルート:日帰りなら東西どちらかに絞る
軽井沢から別所温泉までは、乗り換えを含めると移動だけでそれなりに時間がかかります。日帰りなら「軽井沢+小諸」か「上田+別所温泉」のどちらかに絞り、全部回るなら一泊するのが無理のない組み立てです。
日帰り①:軽井沢と小諸
新幹線で軽井沢へ → 旧軽井沢を散策 → しなの鉄道で小諸へ(車窓の浅間山を楽しむ)→ 懐古園と城下町を歩く → 小海線で佐久平へ出て、新幹線で帰る。行きと帰りで駅を変えるので、同じ道を戻らずに済みます。
日帰り②:上田と別所温泉
新幹線で上田へ → 上田城跡公園を歩く → 別所線で別所温泉へ → 北向観音・安楽寺を回って日帰り入浴 → 別所線で上田に戻り、新幹線で帰る。別所線は本数が限られるので、帰りの列車の時刻を先に押さえておくと、温泉でのんびりできます。
1泊2日:東から西へ一筆書き
1日目に新幹線で軽井沢へ入り、しなの鉄道で小諸に途中下車しながら上田へ。上田から別所線で別所温泉に向かって一泊します。2日目は朝の温泉街を歩いて上田に戻り、上田城を見てから新幹線で帰る。さらに足をのばすなら、しなの鉄道で北へ向かい、戸倉上山田温泉や長野の善光寺まで行けば、北向観音との「両参り」も果たせます。
2026年、しなの鉄道のきっぷ事情が変わった
この旅を組み立てるうえで、2026年に大きく変わった点があります。しなの鉄道では、2026年3月14日からしなの鉄道線・北しなの線の全駅でSuicaが使えるようになりました。首都圏のSuicaエリアとの相互利用も始まり、ふだん使っている交通系ICカードで、軽井沢から小諸・上田へそのまま乗れるようになっています。
一方で、きっぷの売り方も変わりました。
- お得なきっぷはデジタルチケットに: 企画きっぷは専用サイトで買うデジタルチケットに切り替わり、支払いはクレジットカードのみとされています。2026年10〜11月には、軽井沢〜上田が1日乗り降り自由になる期間限定の「上田〜軽井沢フリーきっぷ」も発売されています。
- 終了したきっぷもある: 長野〜軽井沢の乗り放題だった「軽井沢・長野フリーきっぷ」は、2026年3月13日で発売を終えています。古いガイドブックや旅行記を参考にするときは注意してください。
- 小海線とICカード: JR小海線の小諸〜野辺山を含む乗車では、ICカードを使うと遠回りの経路で運賃が計算されてしまうケースがあるとして、事前にきっぷを買うよう呼びかけられています。佐久平〜小諸を乗るときは、きっぷを買っておくのが確実です。
上田電鉄別所線にも、季節ごとの企画きっぷが出ることがあります。乗り方やきっぷの内容は、しなの鉄道・上田電鉄の公式サイトで確認してから出かけると安心です。
泊まるなら、旅の「折り返し地点」に
一泊するなら、宿は旅のちょうど真ん中か、いちばん奥に取るのがコツです。全部回るなら別所温泉か上田、軽井沢・小諸を中心に回るなら軽井沢や小諸周辺が候補になります。とくに別所温泉に泊まると、日帰り客が帰ったあとの静かな温泉街と、朝の北向観音を独り占めに近い形で楽しめます。
新幹線と宿をまとめて手配したい場合は、楽天トラベルなどの宿泊予約サイトで、交通と宿のセットプランを比べてみるのもひとつの方法です。紅葉や新緑の週末、軽井沢周辺の宿は早めに埋まりやすいので、日程が決まったら宿から押さえておくと計画が立てやすくなります。
まとめ
軽井沢から別所温泉までの信州の鉄道は、役割で整理すると迷わなくなります。
- 北陸新幹線: 東京からの行き帰りと、軽井沢・佐久平・上田のあいだの速い移動。乗るならあさま・はくたか
- しなの鉄道: 浅間山麓の町を各駅で結ぶ。新幹線が停まらない小諸へ行くならこれ。2026年3月からSuicaが使える
- 上田電鉄別所線: 上田から「信州の鎌倉」別所温泉への寄り道。台風被害から復活した赤い鉄橋を渡る
- 回り方: 日帰りなら東(軽井沢・小諸)か西(上田・別所温泉)に絞る。全部回るなら別所温泉か上田で一泊
次に新幹線で軽井沢を過ぎるとき、窓の外に浅間山が見えたら、その北側の在来線のことを少しだけ思い出してみてください。新幹線が通らなかった町には、新幹線が通らなかったからこそ残った景色があります。一度しなの鉄道に乗り換えてみると、いつもは20分で通り過ぎる区間が、半日かけて歩きたい旅先に変わるはずです。最新の運行情報やきっぷの内容は、しなの鉄道・上田電鉄・JR東日本の公式サイトでご確認ください。
関連情報
本記事は2026年10月時点の情報をもとに個人が整理した解説コラムです。 最新の運行状況・運賃・きっぷの発売条件・ICカードの利用範囲等は、必ず公式情報でご確認ください。