並行在来線とは?しなの鉄道・えちごトキめき鉄道・IRいしかわ鉄道で見る「新幹線の裏側」

最終更新: 2026年10月 / カテゴリ: コラム・考察

並行在来線とは?しなの鉄道・トキ鉄・IRで見る新幹線の裏側

💡 まずはここだけ!3つの要点

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軽井沢で「しなの鉄道」って看板見て、JRの子会社かなんかやと思ってたわ。全然別の会社なんや

北陸新幹線で軽井沢に降りると、新幹線の改札のすぐそばに、JRではない会社の乗り場があります。かつては特急「あさま」が走り、東京と長野を結んでいた線路です。新幹線が開業した日、その線路に何が起きたのか。「並行在来線」という仕組みから、新幹線の裏側をのぞいてみます。

ご注意: 本記事は2026年10月時点で公開されている情報をもとに、筆者の解釈で整理した 解説コラム です。 区間・運行形態・きっぷの扱いは変更されることがあり、今後の新幹線延伸にともなう並行在来線の扱いは協議中のものを含みます。 運賃や乗り継ぎの最新情報は しなの鉄道の公式サイト をはじめとする各鉄道会社の公式情報でご確認ください。

新幹線が開業した日、隣の線路はJRでなくなる

新幹線ができると、同じ区間を走っていた在来線の特急は役目を終えます。速くて本数の多い新幹線に、長距離のお客さんがほぼ全員移ってしまうからです。残るのは、地元の通勤・通学や買い物の利用。特急でかせいでいた路線が、急にローカル線の顔だけになるわけです。

そこで、1990年の政府・与党の申し合わせで、整備新幹線(北陸・東北の盛岡以北・九州など)を開業させる際には、並行する在来線をJRの経営から切り離すという方針が決まりました。JRにとっては、新幹線と赤字になりやすい在来線を二重に抱えずに済む。その代わり、切り離しには沿線自治体の同意が必要とされました。

切り離された線路は、多くの場合、県や沿線市町村、地元企業などが出資する「第三セクター」の鉄道会社に引き継がれます。駅も線路も同じ、走っている電車もしばらくはJRから譲り受けたもの。けれど会社は別になり、運賃もダイヤも、その会社が自分で決めることになります。これが「並行在来線」です。

新幹線の開業生まれた主な並行在来線の会社
1997年 長野新幹線(いまの北陸新幹線)しなの鉄道
2002年 東北新幹線 八戸開業IGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道
2004年 九州新幹線 新八代〜鹿児島中央肥薩おれんじ鉄道
2010年 東北新幹線 新青森開業青い森鉄道(八戸〜青森を追加)
2015年 北陸新幹線 金沢開業しなの鉄道(北しなの線)・えちごトキめき鉄道・あいの風とやま鉄道・IRいしかわ鉄道
2016年 北海道新幹線 新函館北斗開業道南いさりび鉄道
2024年 北陸新幹線 敦賀開業IRいしかわ鉄道(金沢〜大聖寺を追加)・ハピラインふくい

こうして並べると、新幹線が北へ西へ延びるたびに、その脇で新しい鉄道会社が生まれてきたことがわかります。ここからは北陸新幹線沿いの3社を例に、それぞれの「その後」を見ていきます。

第1号・しなの鉄道 — 峠の線路は消え、平地の線路が残った

1997年10月、長野新幹線の開業とともに、信越本線の軽井沢〜篠ノ井(約65km)がJRから切り離され、長野県などが出資するしなの鉄道に引き継がれました。全国の並行在来線の第1号です。

このとき、同じ信越本線でも横川〜軽井沢の碓氷峠区間は、引き継がれずに廃止されています。急な坂を越えるために専用の機関車を連結していた、手間もお金もかかる区間でした。いまは群馬側の横川と軽井沢をバスが結んでいます。並行在来線は「必ず残る」わけではない——その最初の例も、第1号と同じ日に生まれていました。

2015年の北陸新幹線金沢開業では、長野〜妙高高原も「北しなの線」としてしなの鉄道に加わりました。おもしろいのは、そのあいだにある篠ノ井〜長野が今もJRのままだという点です。しなの鉄道の電車は、このJRの区間に乗り入れて長野駅まで走っています。軽井沢と長野を結ぶ観光列車ろくもんも、この運行形態のなかで生まれた1本です。

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横川で峠の釜めし買って、そのまま電車で軽井沢へ...ってもうできんのか。バスで食べる釜めしもまぁ悪くないけどな

えちごトキめき鉄道 — 2本の線と、電車が走れない区間

2015年3月、北陸新幹線の金沢延伸で、新潟県内の2つの在来線区間を引き継いだのがえちごトキめき鉄道(トキ鉄)です。信越本線の妙高高原〜直江津は「妙高はねうまライン」、北陸本線の直江津〜市振は「日本海ひすいライン」と名づけられました。

山へ向かう妙高はねうまラインには、途中の二本木駅に、列車が前後に向きを変えながら坂を上り下りするスイッチバックが残っています。一方、日本海に沿って走る日本海ひすいラインには、線路の途中で電気の方式が直流から交流へ切り替わるという事情がありました。両方に対応する電車は高価なため、トキ鉄はこの線に電車ではなくディーゼルカーを走らせています。架線が張られた線路を、架線を使わない車両が走る——会社の懐事情が、車両の選び方にまで表れている例です。

特急が消えた線路で、トキ鉄が力を入れてきたのが観光です。2016年には、上越妙高〜糸魚川を走る観光列車「雪月花」が登場しました。日本海と妙高の山並みを大きな窓から眺め、地元の食材を使った料理を味わう列車で、地域の鉄道会社が自らつくった看板商品になっています。

IRいしかわ鉄道 — 18kmの会社が、9年後に64kmへ

同じ2015年に石川県で生まれたIRいしかわ鉄道は、出発点が少し変わっています。引き継いだのは金沢〜倶利伽羅の17.8kmだけ。石川県内の北陸本線のうち、新幹線と並行する区間がこれだけだったためです。

それでもこの短い区間には、大きな役割がありました。能登半島へ向かうJR七尾線は、途中の津幡から分かれていきます。つまり金沢から能登へ向かうJRの列車は、必ずIRいしかわ鉄道の線路を通るのです。特急「能登かがり火」や観光列車「花嫁のれん」は、JRの列車でありながら、金沢〜津幡ではIRいしかわ鉄道の線路を走っています。

そして2024年3月、北陸新幹線が敦賀まで延びると、金沢〜大聖寺がIRいしかわ鉄道に加わりました。路線は倶利伽羅〜大聖寺の64.2km、19駅に。大聖寺から先の福井県内(大聖寺〜敦賀)は、新しく生まれたハピラインふくいが引き継いでいます。かつて特急「サンダーバード」や「しらさぎ」が走り抜けた区間です。特急側から見た変化は敦賀開業で特急はどう変わったかのコラムで整理しています。

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花嫁のれんで和倉温泉行くとき、知らんうちによその会社の線路走ってたんか。乗ってる側は気づかんもんやなぁ

旅行者にとって、何が変わるのか

会社が変わっても、線路も駅もそのまま。それでも、旅をする側にはいくつか見逃せない変化があります。

乗り継ぎの運賃や特例の範囲、フリーきっぷの発売条件は変わることがあります。乗る前に、各社の公式サイトで最新の条件を確認してください。

北陸新幹線と並行在来線の位置関係をマップで見る

新幹線と、その脇を走る在来線。地図の上で並べてみると、どこが切り離されたのかがよくわかります。シミュレーション表示で、おおよその走行イメージをつかめます。

マップを開く →

切り離さなかった例、残せなかった例

並行在来線の扱いは、いつも同じ結論になるわけではありません。最近の2つの例は、対照的な答えを出しています。

西九州新幹線 — JRが走り続ける「上下分離」

2022年に開業した西九州新幹線(武雄温泉〜長崎)では、並行する長崎本線の江北〜諫早が、JR九州から完全には切り離されませんでした。線路や駅などの設備は佐賀・長崎両県がつくった組織が持ち、列車の運行は開業から23年間、JR九州が引き続き担うという「上下分離」の形です。乗る側から見れば、JRの列車がそのまま走り続けています。新幹線の乗り方は西九州新幹線かもめのガイドで紹介しています。

北海道新幹線 — 鉄道を残さないという選択

一方、北海道新幹線の札幌延伸で並行在来線となる函館本線のうち、長万部〜小樽の区間は、沿線自治体との協議の結果、鉄道を残さずバスに転換する方針が決まっています。利用者が少なく、第三セクターとして維持するには負担が大きすぎると判断されたためです。函館〜長万部は、本州と北海道を結ぶ貨物列車の通り道でもあり、扱いがまだ決まっていません。札幌延伸の時期が大幅に遅れる見通しとなったこともあり、結論は持ち越されています(2026年10月時点)。

碓氷峠の廃止から30年近く。「新幹線が来たら、在来線はどうするか」という問いには、地域ごとに違う答えが出され続けています。

まとめ — 長いホームに、短い電車が停まる理由

並行在来線とは、新幹線の開業と引き換えにJRから切り離され、地域が引き受けた在来線のことでした。しなの鉄道は峠の区間を失いながら観光列車で存在感を出し、えちごトキめき鉄道は懐事情と向き合いながら2本の線を走らせ、IRいしかわ鉄道は18kmの小さな会社から県内の大動脈へと育ちました。新幹線が速く便利になった裏側で、こうした会社が地元の足を支えています。

次に並行在来線に乗ったら、ホームの長さに目を向けてみてください。何両もの特急が停まっていたころのままの長いホームに、2両や3両の電車がちょこんと停まっている駅が少なくありません。その余白は、かつてこの線路が東京や大阪へつながる「幹線」だった証です。新幹線の旅の帰りに一駅だけでも乗ってみると、同じ北陸や信州が、少し違って見えてくるはずです。

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長いホームに2両だけって、言われてみたら確かに見たことあるわ。次からは「昔は特急が来てたんやな〜」ってしみじみしてまうやつだぞ

よくある質問

Q. 並行在来線は、誰が経営しているのですか?

多くは、県や沿線の市町村、地元の企業などが出資する第三セクターの鉄道会社です。しなの鉄道は長野県、えちごトキめき鉄道は新潟県、IRいしかわ鉄道は石川県が主な出資者になっています。西九州新幹線の江北〜諫早のように、設備は自治体側が持ち、運行はJRが続ける形もあります。

Q. JRのきっぷで並行在来線に乗れますか?

基本的には、並行在来線の区間は各社のきっぷが別に必要です。JRとの乗り継ぎで1枚のきっぷが買える区間もありますが、範囲は会社ごとに違います。青春18きっぷは原則として使えず、一部の区間に通過の特例があるだけなので、乗る前に各社の公式情報を確認してください(2026年10月時点)。

Q. JRの特急は、並行在来線をまったく走らないのですか?

新幹線と並行する区間を通しで走る特急はなくなりますが、例外もあります。金沢から能登へ向かうJRの特急「能登かがり火」や観光列車「花嫁のれん」は、金沢〜津幡でIRいしかわ鉄道の線路を通ります。JRの路線どうしをつなぐ位置にある区間では、このようにJRの列車が乗り入れていることがあります。

関連情報

本コラムは2026年10月時点の情報をもとに作成しています。 運賃・運行形態・きっぷの扱いは変更されることがあるため、最新情報は各鉄道会社の公式サイトをご確認ください。