富士山ビュー特急完全ガイド|大月〜河口湖の停車駅・8500系・富士山の麓へのぼる富士急行線の観光特急の乗り方
💡 まずはここだけ!3つの要点
- 富士山ビュー特急は、富士急行線の大月と河口湖を約45分で結ぶ観光特急。区間はわずか26kmほどで、標高差はおおよそ500mある
- 3両で性格がまったく違う。1号車は予約制の特別車両、2号車は指定席、3号車は自由席。自由席なら運賃+特急料金だけで当日ふらっと乗れる
- 車両は元JR東海の371系。かつて新宿と沼津を結んだ特急の車両が、水戸岡鋭治氏のデザインで観光列車として第二の人生を送っている
富士山ビュー特急は、山梨県の大月駅から河口湖駅までを走る、富士急行線(富士山麓電気鉄道)の観光特急です。全区間で片道1時間もかからない、日本の特急のなかでもかなり短い部類の列車。それでも「わざわざこれに乗るために大月まで来る人」がいるくらいには、独自の存在感を持っています。この記事では、富士山ビュー特急の成り立ちと車両の意外な前歴、3両それぞれで別ものになる車内、主な停車駅と富士山が育っていく車窓、1号車限定のスイーツプラン、予約のコツ、そして河口湖・富士五湖の観光までを解説します。
富士山ビュー特急とは — 「速く着く」ことを捨てた特急
特急という種別は、ふつう「速く着くためのもの」です。ところが富士山ビュー特急は、その前提から少し外れたところに立っています。
走る区間は大月〜河口湖。富士急行線をまるごと1本、端から端まで走り切るだけの列車で、距離はおよそ26km、所要はおおよそ45分です。同じ区間には普通列車も走っていて、時間差はそこまで劇的ではありません。にもかかわらずこの列車が特急を名乗るのは、速さではなく「乗っている時間の質」で勝負しているからです。車内には木がふんだんに使われ、1号車にはアテンダントが乗務し、窓の外では富士山がだんだん大きくなっていく。目的地に運ぶ乗り物というより、目的地までの45分そのものを商品にした列車、と言ったほうが近いかもしれません。
なお、大月から先の富士急行線はJRとは別の会社の路線です。JR中央本線から乗り継ぐ場合、運賃も別立てになる点は覚えておくと計算が狂いません。
車両の前歴 — 新宿を発っていた特急が、富士山の麓にいる
この列車の面白さは、車両の履歴書を見た瞬間に跳ね上がります。富士山ビュー特急に使われている8500系は、もともとJR東海の371系という特急形電車でした。371系は、かつて新宿と沼津を結んだ特急「あさぎり」に使われていた車両です。小田急線に乗り入れて走る、当時としてはかなり珍しい経歴を持つ電車でした。
その371系が役目を終えたあと、富士急行に引き取られて改造されたのが8500系です。手がけたのは、九州の観光列車などで知られる工業デザイナーの水戸岡鋭治氏。外観は落ち着いた濃い赤(ワインレッド)にまとめられ、車内は木材と手の込んだ意匠で観光列車らしく作り変えられました。デビューは2016年4月。2026年でちょうど10年目を迎えています。
ここからがこの路線のちょっとした「出来すぎた話」です。富士急行線にはもう一本、フジサン特急(8000系)という特急が走っています。そしてこの8000系の前歴は、小田急20000形「RSE」。——つまり、かつて「あさぎり」で顔を合わせていたJR東海車と小田急車が、引退後そろって富士急行に来て、同じ路線でふたたび並んでいるということになります。狙ってやったわけではないはずですが、結果として富士急行線は「あさぎり同窓会」のような場所になりました。
運行会社と運行区間
- 運行会社: 富士山麓電気鉄道(富士急行線)
- 運行区間: 大月 〜 河口湖(富士急行線・全線)
- 種別: 特急(1号車=予約制の特別車両/2号車=指定席/3号車=自由席)
- 使用車両: 8500系 3両編成(元JR東海371系・水戸岡鋭治氏デザイン)
- 運行頻度: おおむね1日2往復程度(運転日・本数は時期により変動。運休日もあり)
- 所要時間: 片道おおよそ45分
- 標高差: 大月〜河口湖でおおよそ500m
運転日や本数は季節・車両の検査などで変わります。とくに「乗ること」を目的に出かける場合は、旅程を決める前に公式の運転日カレンダーを確認しておくのが確実です。
停車駅と車窓 — 富士山が、だんだん大きくなる45分
富士山ビュー特急の車窓には、わかりやすい仕掛けがあります。山が、進むほど育つのです。大月を出た時点では山あいの盆地を走っているだけですが、線路はそこから延々と上り続け、終点の河口湖までに標高をおおよそ500m稼ぎます。街と森を抜けて空が開けたころには、富士山が窓いっぱいに立ちはだかっている、という構成です。
主な停車駅
下り(大月 → 河口湖): 大月 → 都留文科大学前 → 下吉田 → 富士山 → 富士急ハイランド → 河口湖
上り(河口湖 → 大月): 河口湖 → 富士急ハイランド → 富士山 → 下吉田 → 都留文科大学前 → 大月
上下で同じ駅に停まる、わかりやすい停車パターンです。停車駅は時期により変わることがあるため、最新の案内をご確認ください。
富士山駅で、列車の向きが変わる
途中の富士山駅(旧・富士吉田駅)は、線路が行き止まりの形になっているスイッチバックの駅です。大月から来た列車はここでいったん停まり、進行方向を変えてから河口湖へ向かいます。座席の向きが変わるので、はじめて乗ると少し驚くところ。ここは同じ富士急行線に直通してくるJRの特急富士回遊でも同じで、富士急行線の旅ではおなじみの光景です。
下吉田と、五重塔の絶景
停車駅のなかでも旅行者に効くのが下吉田です。ここは新倉山浅間公園の最寄り駅。五重塔(忠霊塔)と桜と富士山が一枚の写真に収まる、海外にも知られた展望スポットで、日本の観光ポスターでよく見るあの構図の現場でもあります。ただし展望台までは長い階段(おおよそ400段)を上る必要があるので、体力と靴は少し覚悟しておいてください(2026年9月時点の目安)。
3両で、まるで違う列車になる
富士山ビュー特急はたった3両編成ですが、号車ごとの性格の差がはっきりしています。「予約して特別な時間を買う車両」と「ふらっと乗る車両」が、同じ列車に同居している構成です。
号車ごとの内容(目安)
| 号車 | 内容 | 必要なきっぷ |
|---|---|---|
| 1号車 | 特別車両。ソファ席と車窓に向いたカウンター席を備えた予約制の空間で、アテンダントによる沿線案内とドリンクのサービスがある。座席数はおおよそ26席 | 運賃+特急料金+特別車両料金(要予約) |
| 2号車 | 指定席。ゆったりした4列シートで、座席を確保して落ち着いて乗りたい人向け。座席数はおおよそ57席 | 運賃+特急料金+指定席料金 |
| 3号車 | 自由席。予約なしで、当日きっぷを買うだけで乗れる。座席数はおおよそ60席 | 運賃+特急料金 |
上の表は代表的な構成の整理です。2026年4月には1号車の座席配置が見直される(円卓席をカウンター席に変更)など、車内のレイアウトやサービスは折にふれて手が入っています。乗る前に最新の案内を見ておくと安心です。
料金の考え方
富士山ビュー特急の料金は「運賃+特急料金」が土台で、そこに座る場所に応じて指定席料金または特別車両料金が乗る、という積み上げ式です。3号車の自由席なら運賃と特急料金だけで乗れるので、観光特急としてはかなり手が届きやすい部類に入ります。途中の都留文科大学前を発着とする場合は特急料金が割引になる設定もあります。金額は改定されることがあるため、購入時に最新の額をご確認ください。
なお、大月から先は運賃がJRと別計算になります。首都圏から日帰りで往復するか、河口湖や富士吉田に1泊して天気の良い日を待つかで、旅の満足度はかなり変わります。宿の空き状況から日程を決めたい場合は、楽天トラベルなどで先に富士五湖エリアの宿を押さえてから、列車の運転日を合わせる組み立て方が現実的です。
1号車のスイーツプラン — 45分で、富士山とケーキを同時に片づける
富士山ビュー特急の名物が、1号車の特別車両で味わえるスイーツプランです。富士急トラベルが企画する食事つきの旅行商品で、座席と一緒にスイーツのコースを申し込む形になります。
面白いのは、平日と土休日で出るものが違うところ。平日は和のスイーツ、土休日は洋のスイーツという構成で、内容は季節に合わせて入れ替わります。45分という短い乗車時間に合わせて組まれているので、慌ただしくならない程度にちょうど食べ終わる、という設計です。席数が限られるうえ乗車券とは別枠の商品なので、狙うなら早めの申し込みが安全です。
このほか、朝の時間帯の列車で期間限定のモーニングサービスが実施されることもあります(2026年は地元の食パン専門店とのコラボで実施)。こうした企画は期間が区切られているので、乗る時期の最新情報を公式ページで確認してみてください。
富士山ビュー特急が愛される理由
1. 車両そのものが観光資源になっている
水戸岡氏の手が入った車内は、木の内装と細かな意匠でまとめられ、走り出す前から写真を撮りたくなる空間です。元が特急形電車なので、乗り心地や座席のつくりも観光列車として無理がありません。「短い区間なのに、降りるのが惜しくなる」という感想が出るのは、この作り込みのおかげです。
2. 短いから、旅程に差し込みやすい
片道おおよそ45分。この気軽さは意外に大きな武器です。全国の観光列車には片道4時間、5時間という大物もあり、そういう列車は旅程の中心に据えないと乗れません。富士山ビュー特急は「河口湖へ行くついでに」「帰りだけ乗る」という使い方ができます。観光列車の入門としても勧めやすい一本です。
3. 富士山が、主役として最後まで出続ける
多くの絶景列車では、見どころは特定の区間に集中します。富士山ビュー特急の場合、目標物がひとつの巨大な山なので、天気さえ良ければ乗っているあいだじゅう主役が見えている状態になります。逆に言えば天気がすべてを決める列車でもあり、「晴れた日に合わせて動く」のが最大の攻略法です。
降りたあとの楽しみ — 富士五湖をどう回るか
富士山ビュー特急は乗って終わりではなく、その先に観光地が待っています。沿線と終点まわりの代表的なスポットを挙げます(所要は2026年9月時点の目安です)。
- 新倉山浅間公園(下吉田駅から徒歩約10分+階段): 五重塔と富士山を重ねて見られる展望地。桜や紅葉の時期は特に人気
- 北口本宮冨士浅間神社(富士山駅からバスまたは徒歩圏): 杉の巨木に囲まれた、富士登山の吉田口の起点となってきた古社
- 富士急ハイランド(富士急ハイランド駅すぐ): 絶叫マシンで知られる遊園地。駅を降りてすぐという立地の良さが効く
- 河口湖遊覧船・ロープウェイ(河口湖駅からバス): 湖面から、あるいは天上山の展望台から富士山を眺める定番コース
- 大石公園(河口湖駅からバス): 河口湖の北岸。夏のラベンダーと、湖越しの富士山の構図で知られる
- 吉田のうどん(富士山駅・下吉田周辺): 驚くほどコシの強い郷土の麺。旅のあいだに一杯は食べておきたい
河口湖から先、湖のまわりは路線バスでの移動が基本になります。バスの本数や運行ルートは季節で変わるので、現地で最新の時刻を確認してから動くのが無難です。
河口湖・富士吉田・山中湖など、富士山を眺めて泊まれる宿を料金やポイントで見比べて探すなら(※ 富士山ビュー特急の運転日もあわせてご確認ください)
楽天トラベル じゃらんnet※ 広告(アフィリエイトリンク)です
予約・きっぷ入手のコツ
富士山ビュー特急は、狙う号車によって難易度がはっきり分かれます。「3両あるから大丈夫」と思っていると、1号車だけが別世界の競争率だった、ということが起こります。
号車別の押さえ方
- 3号車(自由席): 当日、駅で特急券を買えば乗れる。まずは試したいならここ
- 2号車(指定席): インターネット予約、または当日の駅窓口で確保する。座席を確実にしたい人向け
- 1号車(特別車両): 予約が必要。スイーツプランを利用する場合は旅行商品としての申し込みになる
計画のコツ
- まず公式の運転日と時刻を確認し、そこに旅程を合わせる(毎日同じ本数が走るわけではない)
- スイーツプランは席数が限られるので、日程が決まったらすぐ申し込む
- 紅葉期・桜の時期・大型連休は富士五湖エリア全体が混む。宿を先に確保してから列車を組み込む
- 富士山が見えるかは天気次第。1泊して「晴れた側の日」に乗る組み方が満足度は高い
- 片道は富士山ビュー特急、もう片道は富士回遊や普通列車にすると、時間の自由が利く
よくある質問
Q. 富士回遊とはどう違いますか?
富士回遊はJR東日本の特急で、新宿から中央本線を走り、大月から富士急行線に直通して河口湖まで乗り換えなしで行ける列車です。首都圏からのアクセス手段という性格が強いのに対し、富士山ビュー特急は富士急行線のなかだけを走り、乗っている時間そのものを楽しませる観光特急という位置づけです。行きは富士回遊、帰りは富士山ビュー特急、といった乗り分けもできます。
Q. 予約なしでも乗れますか?
3号車の自由席なら、当日に運賃と特急料金分のきっぷを買うだけで乗れます。2号車の指定席は事前予約か当日の窓口購入、1号車の特別車両は予約が必要です。スイーツプランを利用する場合は、旅行商品としての申し込みになります。
Q. 富士山はどちら側の席から見えますか?
区間のなかで線路の向きが何度も変わり、さらに富士山駅でスイッチバックして進行方向が入れ替わるため、「この席なら安心」と一概には言えません。1号車には車窓に向いたカウンター席があり、車内から景色を楽しむ工夫は各所に用意されています。天気が良ければ、席の向きにかかわらず山は視界に入ってきます。
Q. 大月まではどうやって行けばいいですか?
大月はJR中央本線の駅で、新宿方面から特急あずさ・かいじや中央線の快速・普通列車で到達できます。大月から先の富士急行線は別会社のため運賃も別計算になりますが、乗り換え自体は同じ駅構内で完結します。
関連情報
本ガイドは2026年9月時点の情報をもとに作成しています。 運転日・ダイヤ・料金・車内サービス・スイーツプランの内容などの最新情報は、運行会社の公式サイトをご確認ください。
- 運行会社公式: 富士山麓電気鉄道(富士急行線)
- 列車紹介ページ: 富士山ビュー特急(富士急行線)